その時、丁度コンコンと扉がノックされた。
「クロル・サートです」
「入って」
扉を開けたのは、我が国の騎士の格好をした凛々しい青年。
クロルは幼い頃から私を守ってくれていた私付きの騎士である。
私の状況を知ってからも、私が悪女になるまでも、なってからも、クロルはずっと私の味方だった。
しかし、クロルが自分から私を訪れることは少ない。
「クロル、何かあったの?」
「……」
「クロル?」
「リーリルの怒っているような大きな声が聞こえたので、またマリーナ様に何かあったのかと思いまして」
クロルは表情を変えずにそう述べた。