「ねぇ、柚希。このままずっと、白井先輩のことを避けてても良いの?」


紗梨に問われ、フリーズしていた私は我に返る。


「白井先輩がオーストラリアに行ってしまったら……もう二度と、先輩に会えなくなるかもしれないんだよ?」

「それは……嫌だ」

「だったら……」

「うん!」


私は、席から立ち上がる。


いつまでも避けていないで、琉星先輩と会ってちゃんと話さなくちゃ。


だって私……まだ先輩に、大事なことを何ひとつ伝えられていないのだから。


* * *


放課後。私は、琉星先輩に会うため久しぶりにホワイト・カフェへと向かった。


──カランコロン。


お店のドアを開けると、コーヒーの良い香りが鼻を掠める。


「あら、柚希ちゃん。お久しぶり。元気だった?」


通いつめるうちに顔見知りとなった、ここのお店を経営する琉星先輩の伯母さんが、私に声をかけてくれる。


「ご無沙汰しています。あの、琉星先輩は……」

「琉星なら、カウンターのほうにいるわよ」


伯母さんに言われてカウンターに目をやると、琉星先輩が洗い物をしていた。