今までにないくらい、冷たい声だった。


眉を寄せて振り返った及川くんが、はっとしたように我に返る。


なんか、今日の及川くん怖い……


「くそっ…」


及川くんは小さく舌打ちをして、前髪をくしゃっとつかむ。


そのまま、カウンターを出て奥に行ってしまった。


「おまたせーって、あれ、雅は?」


私は雅くんがいなくなった奥の部屋を、じっと見つめていた。


結局私が帰る頃になっても雅くんはカウンターに戻ってこなかった。