入り口近くのテーブル席で新聞を読んでいた立派なひげのおじいさんが顔を上げた。 「おや、ずいぶん若いお客さんだね」 「こ、こんにちは…。あの、ここって…」 「おーい、マスター。可愛いお客さんだよ」 「…マスター?」 おじいさんがカウンターの方に向かって、誰かを呼んだ。 「あぁ、いらっしゃい。さ、どうぞ好きなとこに座って」 ところどころに白髪が混じって、少し伸ばした髪を後ろで束ねたおじさんが顔をあげる。