「はいはい、失礼なことばっか言ってないで早く帰りなよ。マスター心配するよ?」


「さっきのクッキー、また作れ。じゃあな、花坂」


「…え」


心臓が、ドキッと鳴る。


及川くんが、初めて私の名前を呼んだ。



今日、及川くんと過ごして、いろんな発見をした。


及川くんには表情筋があったこと。


及川くんはちゃんと私の名前を覚えていてくれたこと。


クッキーを意外と気に入ってくれたんじゃないかってこと。



それから、



及川くんといると、なぜか心臓の鼓動がいつもより大きくなること。