『新人! これ、洗っておきなさい』
『私のも』
『そんな! 自分のものは自分で洗うルール』
『うるさいわよ、エマ!』
 昨日仕事をサボった罰だと先輩達がカゴを置いて行った。

『そんな、酷すぎます』
 あ、これって嫌がらせ?
 もしかして私と一緒に居るからエマも嫌がらせをされている?

「わたし、ノー? ごめん、エマ」
 私のせいで嫌がらせされて、ごめんね。と通じるだろうか?
 ちゃんと謝ることすらできないこの語学力。
 3週間、真面目に勉強したつもりだったのに全然身についていない。

『ち、違います。聖女様のせいじゃないです!』
 首を全力で左右に振るエマにミサキは申し訳なさそうに微笑んだ。
 
 ちゃんと働こうと決意したばかりだけれど、水浴びする池から水を汲んで洗濯板で洗って干すという作業は思ったよりも重労働。
 何度も水を運ばなくてはならないし、脱水機もないので絞るのも大変。
 絞りすぎるとシワになってしまうし、干すときも下に付かないように気を付けなければ洗い直しだ。

 あぁ、洗濯機ってすばらしい発明だったんだ。
 ボタンを押したら洗って乾いている。
 今すぐここに洗濯機がほしい。

『エマ! 探したぞ。礼拝の時間なのに』
 街の人が待っていると呼びに来た神官は7つもカゴが置いてある状態に首を傾げた。