『ドレスを見せましたが手を横に振られました。お気に召さなかったのかもしれません』
『ですがレオナルド様との食事にあのような姿では』
 眉間にシワを寄せる補佐官を見たミサキは、着替えなかったので侍女が怒られているのだと察した。

 ミサキは立ち上がり、侍女の横へ。

『彼女はドレスを準備してくれましたが、私が着なかったです。彼女を怒らないでください』
 ジェスチャーで通じるだろうか?
 ミサキは侍女を指差し、ドレスの形っぽいものを手で表現した。
 自分を指差し首を振る。
 ミサキが困った顔で見上げると、補佐官チャールズは溜息をついた。

 言葉が通じないなんて一体どうしたら良いのか。
 それどころか、食事のマナーまで知らないミサキに補佐官チャールズは頭を抱える。
 ミサキは見知らない緑の野菜を口に入れると、あまりの苦さに顔を顰めた。

『それは食べられません』
 溜息をつく補佐官チャールズ。

 王子レオナルドは食べられない物を別のお皿に出し、手で×を作ってくれた。
 
 異世界転移するならせめて言葉だけは通じてほしかった。
 ちょっとハードモードすぎませんか?

 ミサキは少し甘いスクランブルエッグを食べながら溜息をついた。