食事も終わり片付けも終わった頃、急にざわざわと廊下が騒がしくなった。

「エマ! エマ!」
「はーい」
「お前、昨日ハンスに祈りを捧げたか?」
「はい」
 神官は急いで一緒に来てくれとエマに頼んだ。

「おはようございます。ハンスさん。あれ? 腕は?」
「治った」
 だからお礼だとハンスは箱一杯のリンゴをエマの前に出した。

「えぇぇぇ!」
「2ヶ月は仕事ができないと思っていたのに、本当に助かった!」
 昨日ここを出てから痛みがなく、包帯と添え木を外してみたら普通に動いたとハンスは周りの神官達とエマに説明した。

「あっ! 聖女様です! ハンスさんが腕を吊っていた布を落として、聖女様が着けたんです!」
 神官達は驚き、ミサキを呼びに行く。
 わけがわからないまま連れてこられたミサキはエマとハンスの姿を見てホッとした。

「エマ」
 よかった。ここにいたんだと微笑むミサキに、教皇を筆頭に神官達が一斉に跪く。

「ひぇっ?」
 驚いたミサキが思わず変な声を出すと、エマまで跪き、ミサキに祈りを捧げた。

『なに? なに? え? どういうこと?』
 困った顔で男性を見ると、男性まで跪く。

 私もすればいいのかな?
 同じように膝をつこうとすると教皇に止められてしまった。

 誰か! 通訳お願いします!
 何が起こっているのかさっぱりわからないミサキは困った顔で立ち尽くした。
 
 教皇が立ち上がると、全員立ち上がる。

 よかった。
 なにかわからないが終わったみたいだ。

 そういえば、この男性って昨日腕を布で吊っていた人……だよね?
 今日はしていないけれどまた布が取れちゃったのかな?

「ありがとうございます」
 私?
 ミサキが自分を指差すと、ハンスはニッコリ微笑みながら頷いた。

 なんでありがとう?
 ミサキが首を傾げるとエマがハンスの腕を指差した。
 グーパーして動く事をアピールするハンス。

 腕はもう痛くないよってこと?
 それがありがとうになるのはなんで?

 やっぱりよくわからない。
 とりあえず、ミサキはペコッとお辞儀しておいた。