『椅子なんて拭かなくていいから座ってくれ』
 布巾を取り上げられ、椅子に座るように腕を引っ張られる。
 ミサキは大興奮なおじいさんとおばあさんを交互に見た。

『あぁ、聖女様だったなんて』
『縫わないと無理だと思った怪我が治るなんて信じられねぇ』
 ミサキの手を握りながら嬉しそうな二人。

 え? 何? どうしたの?
 急に自分が有名人になったかのような、お忍びで遊びに行った街で見つかって握手を求められる芸能人みたいな扱いにミサキは首を傾げた。

 おじいさんは嬉しそうに腕をミサキに見せる。

『あれ?』
 おじいさんの傷は治っている。
 さっきはあんなに血が出ていたのに?

『あぁ、聖女様。お会いできて幸せです』
『長生きはするもんだな』
 涙ぐむおばあさんと、クシャッと笑うおじいさん。

 一体どういうこと?
 何で二人とも泣いているの?
 
 二人の言っていることが全く分からないミサキは、何が起きているのかわからずただ二人を交互に見ることくらいしかできなかった。