うずくまるように眠っていたミサキは大きな物音で飛び起きた。

『あぁ、悪い。音で起きちまったか』
 困った顔をしながら不自然な恰好で流水に腕をさらしているおじいさんにミサキは首を傾げた。

 怪我……?

『あー、だいぶ深くやっちまったなぁ』
 ミサキは昨日外して適当にポケットに突っ込んだ包帯を取り出した。

『あぁ、巻いてくれるのか?』
 流水から腕を出すと、タオルを傷の上に置き、右手でグルグルのイメージを伝えてくれる。
 ミサキはおじいさんの腕をそっと持った。

 早く治りますように。
 タオルの上から包帯を巻いていくが、タオルが厚すぎて二周しか回らなかった。
 もう一つの包帯も取り出し、腕の上と下だけ止める。

「ありがとな」
 右手でミサキの頭をグリッと撫でると、おじいさんはもう大丈夫だと言いそうな顔でニヤッと笑った。

『よし! 準備、準備!』
 何事もなかったかのように店の準備を始めるおじいさんとおばあさん。
 ミサキはテーブル拭きを手伝う。
 
『は? どういうことだ!』
 おじいさんの大きな声に驚いたミサキは椅子を拭いていた手を止めて振り返った。