飛び出してきたはいいけれど、行くところもないのだった。
 お金もないし言葉も通じない。
 自分で飛び出しておきながら、馬鹿だなと今更後悔する自分がさらに馬鹿でミサキの目から涙が溢れた。

 街は多くの人で賑わっていて、店もたくさんある。
 店の文字も読めないので窓がない店は何の店かもわからなかった。

「……お腹すいたな」
 食べ物も着る物も住むところも全部与えてもらったのに勝手に飛び出した。
 
 あの眼鏡の人は今頃怒っているだろうか?
 それとも聖女じゃなかったから居なくなってラッキーと思っているだろうか?

 ミサキは大通りの小さな脇道に一歩入ると小さくうずくまった。

「……帰りたい」
 元の世界へ。

 ……死んだから帰れないか。
 ミサキは苦笑するとそのまま顔を埋めて泣いた。

『……どうしたの?』
 ポンポンと肩を叩かれたミサキの身体がビクッと揺れる。

『あらあら、女の子かい。変な格好をしているから男の子だと思ったよ』
 おばあさんの言葉は全くわからず、ミサキは困った顔をした。

『あの、言葉がわからないんです。ごめんなさい』
『あんたどこから来たんだい?』
 お互い言葉がわからず困ったが、おばあさんはミサキがうずくまっていた壁の店にミサキを引っ張り入れた。