ミサキは探すフリをして木の裏側に入ると、ダッシュで薔薇の横を通り抜け奥へと進んだ。

 部屋から庭は見た。
 噴水の向こうに薔薇、その向こうに花壇が広がり、その向こうは門だ。
 不思議な格好のミサキを見た門番が止めようとするがミサキは当たり前の顔をして通り過ぎた。

「黒髪の女性を見ませんでしたか?」
 息を切らせながらニックが門番に尋ねる。

「あぁ、さっき通ったよ。変な格好の小さい子」
「どっちに行きましたか?」
「いや、わからないなぁ」
 ニックはルククの木の下にあった紙を手に持ちながら眉間にシワを寄せた。

「どうして相談してくださらなかったのですか!」
 ニックは急いで引き返し、ナタリーの元へ。

 ――ありがと ナタリ ニク さよなら レオナルド。

 ニックはナタリーに手紙を渡すとすぐに街に飛び出した。