『ダサい田舎娘がウロウロと。迷惑だわ』
 キャサリンは扇で口元を隠しながら呟く。

 何と言われているかわからないけれど悪口だろう。
 ミサキは聞こえていないフリをして通り過ぎた。

 ニックがギュッと拳を握っている。

「ありがとう、ニック」
 私のために怒ってくれてありがとう。

『申し訳ありません。頼りにならなくて申し訳ありません』
 悔しそうなニック。

 ニックもナタリーも優しくていい人だ。
 そんな二人を今から裏切ろうとしている。
 罪悪感がよぎったが、もうここでの勉強は限界だった。

 聖女じゃないからここにいる理由もないし、誰にも必要とされていないだろう。

 ミサキは噴水からルククの木まで何かを探しているフリをする。
 ペンダントを無くしたと嘘のジェスチャーをするとニックも一緒に探してくれた。

 ニックは噴水の近く、ミサキはルククの木の下。
 落ちているルククの実を集め、ミサキはそっと紙を置いた。

 部屋で書いたナタリー宛の手紙だ。
 書ける単語のみで精一杯書いたが通じるだろうか?