私は何でこの世界に来たのだろう?
 何で言葉がわからないのだろう?

 聖女じゃないのにこんなに必死に勉強をしているのはなぜ?
 誰のために?
 何のために?

 ミサキがグッと手を握ると手はジンジンと痛みが増した。

 ミサキは汚れたワンピースを脱ぎ、この世界に来た時、着ていたパーカーとズボンに変えた。
 靴もスニーカーに履き替える。

 ミサキが扉を開けると心配そうなニックと目が合った。

『さっきの場所に行きたいの』
 ミサキが窓の外を指差すと、ニックが首を横に振った。
 お願いポーズをするミサキ。
 
 何も落とし物はしていないが、下に落としたから探したいのとジェスチャーするとニックはメモにサラサラと何かを書き、ドアの下に差し込んだ。

 ナタリー宛なのかな?
 行ってきますみたいなことが書いてあるのだろうか?

『参りましょう』
 案内してくれるニックの後に続いて豪華な廊下を歩く。

 一階まで降りるとレオナルドと一緒にいたキレイな女性とすれ違った。