ドラゴンと戦う騎士の絵だ。
 タイトルはもちろん読めない。

 レオナルドは絵本のページを捲った。

「水、ない」
 枯れた畑の前で困っている人々の絵を開きながらレオナルドはミサキがわかりそうな言葉を選んだ。

『聖剣』
 女神様のような光った女性が剣を王様に渡している。

『聖女』
 次のページは白いドレスの女性。
 光った女性とは違う顔なので別人だろう。

 剣を持った男性と白いドレスの女性が山に向かって歩いて行く。
 ドラゴンと戦う男性の絵は表紙と同じ絵だ。

 次のページはドラゴンが倒れた絵。
 その隣には男性も倒れている。

 白いドレスの女性が倒れた男性の横で光っているイラストにミサキは目を見開いた。

 聖女ってこと?
 やっぱり異世界の定番は治癒能力の聖女!

「水、ある」
 川にドバーッと水が流れる絵と喜ぶ人々。

 そして最後のページは結婚式だ。

 レオナルドに手を握られたミサキは顔を上げた。

『水不足のこの国を救ってほしい』
 レオナルドは手を持ち上げ指先に口づけする。

 この剣を持った男性がレオナルドで、白いドレスの女性が私で、ドラゴンを倒したら結婚しようってこと?
 言葉がわからないから絵本を作ってくれたの?

 やっぱり異世界といえば聖女!
 王子と結婚!

 剣を持った男性は金髪だからレオナルドだよね。
 でも白いドレスの女性も金髪。
 どうして?
 私は黒髪なのに。

 ミサキは絵本を手に取り、もう一度イラストを見ることにした。