『今日はレオナルド様とお茶会です』
 ナタリーが準備した綺麗なドレスとハイヒールを見せられたミサキは驚いた。

「レオナルド? 今日?」
 聞き取れたのはこの単語だけ。
 肝心な部分がわからなかった。

 こんな結婚式みたいな綺麗なドレスを着て良いのだろうか?
 繊細なレース、肌触りの良い布。
 ドレスは重いのだと初めて知った。

「きれいです」
「ありがとう、ナタリー」
 ナタリーの技術がスゴいんです! と言いたいが単語がわからない。
 ありがとうと言うのが精一杯だった。
 いつかちゃんと言えるようになりたい。

『では参りましょう』
 騎士が扉を持って待機しているけれど、亀のように遅くてごめんなさい!
 
 ドレスって歩きにくい!
 履き慣れないヒールも不安だが、足元が全く見えない。
 歩くたびにドレスのスカートが揺れ、ふらついてしまう。

 令嬢達を尊敬します!
 こんな重いドレスを着て、どうやって普通に歩くの?

「ミサキ様」
 ナタリーがミサキの背中をスッと伸ばす。

『視線は遠くに』
 扉を見て。のような仕草にミサキは従う。

 あれ?
 背中を伸ばしたおかげかドレスがあまり揺れなくなった。
 スゴい、ナタリー!

 なんとか廊下を進み、いつも食事をしている部屋へ。
 食事のテーブルは部屋の片隅に寄せられており、ミサキはソファーに案内された。