引っ越してきたばかり。
 大学に入学し、一人暮らしを始めたばかり。
 だから不慣れな道だったと言うには運が悪すぎると思う。

 交差点で信号待ちをしていただけなのに、車が突っ込んできて死ぬなんて予定外にもほどがある。
 一生懸命勉強をして、大学に合格した私の努力を返してほしい。

 こんな事まで考える時間があるほどスローモーションで近づいてくる車。
 美沙希はギュッと目を閉じた。


「OHHHHH!」
 部屋が揺れるくらいの大歓声に驚き、ミサキは顔を上げた。
 薄暗い見知らぬ場所、変な服の人達。

 ここはどこ?
 冷たい石の床はゴツゴツしていて歩きにくそうだ。
 なぜこんなところに座り込んでいるのだろうか?

 車が突っ込んできて。
 ……それで?

『……ここはどこ? 一体何なの?』
 薄暗い部屋は石の壁で、中世ヨーロッパの地下室のようなイメージ。
 ライトは電気ではなく松明(たいまつ)
 騎士のような姿、腰には剣のような長いものを付けているのが見えた。

 これは異世界とかそういう系?

 よく見ればゴツゴツの石の床にはチョークのような白い線の落書き。
 自分を中心に周りにはいくつかの円。
 そして見知らぬ文字。

 魔法陣っていうやつ?
 本物?
 ミサキは目を見開いた。