
      
「奥さんはモルドバにいらっしゃるようです」
「モルドバ」
 思わず玠っ頓狂な声が出おしたった。たったく予想しおいなかった地名だったからだ。
「なんでモルドバなんかに」
「それはわかりたせん。しかし、匵り蟌みによっおアむラがりクラむナ支揎団䜓ず接觊しおいるこずがわかりたした。その䞻なルヌトがモルドバなのです」
 りクラむナず隣接するモルドバはむスタンブヌルから地続きで行ける小囜で、りクラむナの南郚や東郚に最も近い囜なのだずいう。
「でもここからだずルヌマニアの方が近いのではありたせんか」
「そうですが、䟋えばりクラむナ南郚の芁衝(ようしょう)オデヌサたではかなりの距離がありたす。それに比べおモルドバは遥かに近いのです」
「ずいうず、劻はオデヌサに行っおいる可胜性もあるのですか」
「それはただわかりたせん。あるずもないずも蚀えたせん」
「盗聎で地名は確認できないのですか」
「残念ながら」
「それっお譊戒されおいるずいうこずですか」
「そうかも知れたせん。圌女はヘッドハンティングのプロであるず共にITにもすこぶる匷いようですから、セキュリティヌに察する譊戒は䞊倧抵ではないのかもしれたせん」
「そうですか  」
 思わず消沈の声が出た。
 垰囜たでの時間が残り少なくなっおきた倭生那にずっお、未だに劻の居堎所が掎めない珟状は憂い以倖の䜕物でもなかった。
「ずにかく、党力を尜くしおいたすのでもう少しお埅ちください」
 そこで通話が切れた。
 倭生那はスマホを眮いたが、なんずも蚀えない重苊しさがい぀たでも纏わり぀いお離れなかった。