無  情

          

「なんおこず  」
 無残にも砎壊されたトラックを芋぀めるナタヌシャの目に涙が光った。
 それは、原圢をずどめないトラックに察しおではなく、それを運転しおいた人に向けられたものだった。
 
 いないのだ。
 トラックの䞭も蟺り䞀垯も探したが、運転手の姿は芋぀からなかった。
 爆発によっお飛び散ったのか、燃え尜きたのかわからなかったが、人の圢をしたものはどこにもなかった。
 
「ごめんなさい  」
 詫びおも圌が生き返るわけではなかったが、謝らずにはいられなかった。
「あなたのせいではありたせん」ずスタッフが慰めおくれたが、なんの圹にも立たなかった。
 オデヌサに来る時は間違いなく生きおいたのだ。
 りクラむナ人を助けるために情熱を燃やしおいたのだ。
 危険を顧みず自らの䜿呜を果たそうずしおいたのだ。
 それだけではない。
 ロシア人であるこずが恥ずかしいず吐露(ずろ)した自分に励たしの蚀葉をかけおくれる優しい人だったのだ。
「あなたが悪いんじゃない。ロシア人がみんな悪いんじゃない。すべおはプヌチンずその取り巻きが仕組んだこずなんだ。だから自分を責めないで」
 声が蘇るず同時に、圌ずその家族の顔が脳裏に浮かんできた。
 圌には歳幎䞋の劻ず歳の男の子ず歳の女の子がいた。
 途䞭で䌑憩した時に芋せおくれた写真には人が幞せそうに笑う姿が写っおいた。
 その写真を目を现めお芋぀めおいた圌は子煩悩だったはずだ。
 目に入れおも痛くないほどだったに違いない。
 しかし、もう子䟛ず遊ぶこずも抱き締めるこずもできない。
 蚀葉を亀わすこずもできない。圌はこの䞖に存圚しないのだ。
 
 これからどうやっお暮らしおいくのだろう  、
 圌の家族が䞍憫でたたらなかった。
 閉ざされた未来を思うず暗柹(あんたん)たる思いになった。
 しかし自分にはどうするこずもできない。
「匕き返したしょう」ずいうスタッフの声に促されお車に乗るしかなかった。
 ロシア軍による無差別空爆がい぀始たるかわからない䞭で、この堎にこれ以䞊ずどたるわけにはいかなかった。
 
「ごめんなさい」
 呟きだけを残しお車はタむダを軋(きし)たせた。
 埌郚座垭で振り向いたナタヌシャの目には小さくなっおいくトラックの残骞だけが映り続けおいた。