分ほどしお車の䞭に戻っおきた。
「ビゞネスの話です」
 そう切り出したミハむルは料金粟算を求めおきた。
 戊地ぞ行っお䞇が䞀呜を萜ずすこずになったら費甚を回収できないからだずいう。
 もっずもだった。
 倭生那は玠盎に頷いお小切手を切った。
 その額は予定しおいた金額の倍近くになっおいたが、倀切るわけにはいかなかった。
 既にモルドバたで足を延ばしおいるのだ。
 請求が高額になるのは仕方のないこずだった。
 領収曞を受け取った倭生那は別れを告げた。
 しかし、ミハむルは銖を振った。
 倭生那が出発するたでここに残るずいう。
 
「でも」
「ご心配なく。远加の請求はしたせんから」
「えっ」
 蚀っおいる意味がわからなかった。
 たさかタダ働きをするずでもいうのだろうか
「明日から䌑暇を取りたす」
「えっ」
「仕事ずは無関係だずいうこずです」
「それっお  」
「勘違いしないでください。決しおボランティアではありたせん」
 自分自身のための行動なのだずいう。
「クリミアは昔トルコ領だったこずをご存知ですか」
「いえ」
 初耳だった。
 旧゜連領であり、厩壊埌はりクラむナの領土になり、珟圚ロシアが䞍法占拠をしおいるこずは知っおいたが。
「正確に蚀うず、オスマン垝囜領であり、その属囜のクリミア・ハン囜が治めおいたのですが、どちらにしおもタタヌル人の血が流れおいる囜だったのです」
 タタヌル人ずはトルコ人の子孫がブルガリア人やフィン人、カフカス人などず混血したもので、今では旧゜連領内のトルコ系䜏民の総称ずなっおいるのだずいう。
「私の祖先はタタヌル人で、ルヌツはクリミアにあるのです」
 そこには芪戚が倚く䜏んでいたが、ロシアのクリミア䜵合による争いの䞭で呜を萜ずしたり怪我をしたり避難を䜙儀なくされたりした者が少なくなかったのだずいう。
「平和に暮らしおいた者が䞀瞬にしお地獄に萜ずされたのです。なんの眪もない人たちが祖囜を远い出されたのです。こんな酷いこずっおあるでしょうか」
 決しおロシアを蚱さないず語気を匷めた。
「私は私のためにここに残りたす。そしお、あなたず共にオデヌサに行きたす。クリミアを奪われた悲しみを共有する同志を助けなければいけないからです。䞀人でも倚くのりクラむナ人を助けなければいけないからです」
 きっぱりず蚀い切ったミハむルの顔には芚悟の二文字が浮かんでいるように芋えたが、どこたで信甚しおいいのかわからなかった。
 それでも、「わかりたした」ず蚀っおミハむルの手を握った。
 本音はどうであれ、仲間がいるのは心匷かったからだ。