お風呂から上がり部屋に戻る。階段を一歩上がるごとに心拍数も上がる。ノックをしてしばらく待つ。今度は返事はない。もう一度ノックしようとすると「はい」と低い声が返ってきた。誰が来たか分からないかと思っていちおう名乗った。

「あ、俺、瑠依」

 そう言ってドアを開けるとナギはちらりとこちらに視線を向けた。

「お前の部屋でもあるんだからノックいらねーよ」
「あ、うん、ごめん、ありがとう」

 大きめのバスタオルで頭を拭きながら、ついでに顔を隠しながら中に入る。

「なぁ」

 ビクッと体が反応する。

「なに?」
「ドライヤー、使ったら?」
「あ、あぁ、ありがとう」

 今脱いだ下着をガサゴソとキャリーケースに詰める。見られないように慎重に。そしてくるりと振り返ると目の前にはナギが。

「ひ、ひゃー」

 驚いて思わず出た声、ナギは呆れたような顔をしている。

「洗濯物だろ、下のカゴに入れとけば母さんやってくれるから」
「あ、あぁそうだね」

 そう言ってその場をやりきろうと思ったけどどうやら洗濯物を持って下のカゴに行くまでナギは待っている。