目を引くゴージャスな赤い巻き髪。後頭部につけたリボンと同じ金の瞳。
 自己主張の激しい豊満な身体を包むのは新緑の色のドレスだ。

 彼女こそがフルーベル王国の四大公爵のうちの一つ、バークレイン家の娘。
『バークレインの赤薔薇』こと、エルザ・バークレイン。
 年齢はリナリアの一つ上、十八歳だと聞いた。

「エルザ様!? お久しぶりです!!」
 予期せぬ登場にリナリアは慌てて鞄を抱き、深く頭を下げた。

「門の前に不審者がいると聞いて来てみれば、まああ! リナリア! あなた本当にリナリアじゃないの!」
 エルザが興奮気味に喋りながら近づいてくる。
 黒髪茶目の侍女は速やかにエルザの前に出て、門の鍵を開けてくれた。

「何をでくのぼうのように突っ立っているのよ、お入りなさい。わたくしを訪ねて来たのでしょう? わたくしは恩人を追い返すような人でなしではなくってよ」
「ありがとうございます。お邪魔致しま――」
 足を敷地内に入れた瞬間、だった。

 ――バチンっ!!
 という音がして、鞄が見えない何かに弾かれた。
 両腕に強い衝撃を受け、思わず鞄を取り落としてしまう。