(そうだ)
 思いついた。いま自分がアルルのためにできること。唯一、人に誇れる特技。

「~♪」
 心を落ち着けて、出来る限り優しい声で、リナリアは歌い始めた。

 ――愛しい我が子よ、瞼を閉じて、おやすみなさい。明日があなたにとって素晴らしい一日になりますように。

 それはフルーベル王国に広く知られた子守歌。
 リナリアが幼い頃、孤児院の先生が歌ってくれた歌だった。

(……あら?)
 歌っている途中で気づいた。
 いつの間にか、アルルはぐっすり寝入っている。

(これは予想外だわ。こんなに早く眠ってくれるなんて……まだ歌い始めて一分も経ってないわよね?)

 ともあれ、眠ってくれたのは良いことだ。

(やっぱり疲れてたのね。おやすみなさい。良い夢を)
 静かに寝息を立てているアルルにそっと掛布をかけ、リナリアは目を閉じた。