「全くもうっ。それで? 《花冠の聖女》は見つかったんですか? イレーネ様の《予言》によると、《歌》により奇跡をもたらす聖女はこのフルーベル王国にいるのでしょう?」
「ああ。そのはずだが、見つからなかったよ。残念ながらね」
 嘘だ。ついさっき彼女に会った。

「そうですか……」
 落胆したように、カミラは肩を落とした。

「どこにいるのでしょうね、《花冠の聖女》は。フルーベル王国の王族は先日王子妃選考会なるものを開き、マナリス聖都市(わたしたち)に先んじて聖女を見つけ出そうとしたようですが、目論見は失敗に終わったようですし……辺境の地にでも住んでいるんでしょうか? 森の奥とか、洞窟の奥とか」
「野生動物ではないのだから、そんなところにはいないだろう。ともあれ、彼女が見つかるか、あるいは教会から捜索の打ち切りを通達されるまでは、奉仕活動をしつつ旅を続けようじゃないか」
「はあ……長旅になりそうですねえ」
「そう悲観的になることもないさ。何事も楽しまなくては損だよ、カミラ。とりあえず私はあそこの串焼きが食べたい。さっきから美味しそうな匂いがするんだ」