理不尽な理由で勤めていた会社から解雇されたという中年男性――コンラッドの不幸な身の上話を聞いたり、老婆や親子と話している間に王都ソルシエナに着いた。

「迷惑かけて悪かったな、リナリア」
 停留所で降りると、コンラッドは頬を掻きながらそう言った。
 馬車の中で話し込んだおかげか、彼は憑き物が落ちたような顔をしている。

「謝るならダニーくんに謝ってください」
「すまなかった、ダニー」
「いーっ、だ! おじさん、嫌い!!」
 ダニーはぷいっと顔を背けて母親の腰に抱きついた。

「リナリアちゃん、本当にありがとうね」
「さよなら、お姉ちゃん!」
 親子に別れの挨拶をした後、リナリアは右肩にアルルが入った鞄を下げ、左手でトランクケースを引き、今夜の宿を探すべく歩き出そうとした。のだが。

「ちょっと待ってくれ、リナリア。少し君と話したい」
 五歩も歩かないうちに呼び止められた。