(えっ――前々から人語を理解している節があるとは思ったけど、本当にこの子、人語を理解してない?)

「アルルは私のこと、好き?」
 アルルは首を縦に振る。

(気のせいじゃないわ。この子、人語を完全に理解してる……!!)
 一部の知性の高い魔物は人語を理解するらしいが、どうやらアルルもその類だったらしい。

「ありがとう、アルル。私も大好きよ」
 リナリアは両手を伸ばしてアルルを抱き上げ、その頭にキスを落とした。

 びっくりしたのか、アルルは青い目を丸くしている。

「ねえアルル。私、家を追い出されてしまったの。これから旅に出て、選考会のときに知り合った公爵令嬢エルザ・バークレイン様を訪ねようと思うのだけれど――もし良かったら、あなたも一緒に来ない?」

 リナリアの腕の中でアルルは固まった。
 それから、困ったように右を見て、左を見て、長い耳を垂らして俯いてしまう。

(それはそうよね)
 苦笑する。