視界に入った光景に、私は思った

終わった

10年の歳月を共にした、視界の先に見知らぬ女性と、口付けを交わす婚約者との未来が。



15歳から付き合い始めた。
半年前にプロポーズされ、未来を約束した。
お互いの両親に、挨拶も会社への報告も終え、半年後の結婚式の準備もしていた頃だった。

記憶が正しければ、今夜の彼は残業だと言っていた。
だが、事実は浮気だった。
熱い口付けの後、見知らぬ女性と手を繋ぎながら、この場を去った。
2人の行き先は安易に想像つく。
甘い夜を過ごすのだろう。

その間、私は携帯を鞄から取ってカメラ機能から動画に切り替えて、2人を撮っていた…らしい。
2人が去った後に、自分の右手を見て気づいた。
震える手で動画を確認した。
きちんと顔が誰か認識出来る位に綺麗に2人の口付けから去るまでのシーンを撮れてた。
無意識の自分の行動に苦笑が洩れる

「どうしようかな」

どうしよう。
私はこれから、何をすべきなのかを分からない。

あの光景を見るまでは、私は幸せだった。
10年と決して短くはない歳月を、共に過ごした人との結婚が確約し、夫婦になると思っていたからだ。

婚約者との楽しい思い出、苦い思い出が沢山ある。喧嘩し、仲直りする作業も数え切れない程に繰り返してる。

これからも沢山の思い出を積み重ねていくのだろうと思っていた。
そう、約束をしていた。
思い描いた未来は今日、目撃してしまった出来事で、潰えてしまった。

事実に私は混乱し、何をしたいか、何をすべきかを考えれなかった。
ただ、確実に分かるのは彼との未来は終わったのだと