なるほど…彼女は、中谷の奥さんということだろうか。

「私、女性のほうの中谷さんに話があって来たの」

「あー…ごめん。悪阻が酷いってことで、今は俺がピンチヒッターなんだ。だから、話なら俺が聞く。とりあえず中に入って」

最悪だ…。

中谷には優しくて綺麗な奥さんが居て、もうすぐ子供も産まれるとのことなら、さぞハッピーだろうに。

片や、私は結婚が白紙だ。


応接室に通され、

「コーヒーと紅茶、どっちがいい?」

まるで親しい友達のような口調で尋ねる中谷。

「じゃあ、紅茶で…」

良くも悪くも、同級生というのは、再会すると一瞬で昔と同じような感覚に戻ってしまう。

「はい、どーぞ」

上品なティーカップがテーブルに置かれる。

「ありがと…」

「それで、今日はどうした?さっき資料を見たけど、結婚するんだ?おめでとう。うちの庭園を式場に選んでくれて嬉しいよ」