あまりに憤りが強すぎて、今はまだ悲しみは感じていない。

しかし、力いっぱい相手を殴った右手のように、あとになってこの胸も痛みだすのだろうか。

たまたま見かけた西洋風の庭園に一目惚れし、ここで挙式したいと切望したのは私。

だからこそ、キャンセルも自分でするしかない。

翌日、私は結婚式場――厳密には結婚式場に限定してはいない西洋風庭園――に出向いた。

この庭園を運営している少し年上の女性は優しい人だし、根掘り葉掘り聞かれることはないだろうけれど、それでもやはり気は重い。

「ごめんくださーい…」

庭園を尋ねると、奥から、少々お待ち下さいという男の人の声がした。

あれ?ここは女性が一人で運営しているのかと思っていたが、男性のスタッフがいたのだろうか。

「お待たせしました…って、笹川?」

目の前の若い男性を見て、思わずギョッとしてしまった。