「まぁ、よく聞きはするけど、果たして本当なのかな?と思う。その心理が理解できないから」

「それが本当なんだよなぁ。散々、笹川にちょっかい出してた本人が、こうして言ってるんだから。こんな男にしつこく想われても、迷惑なだけかもしれないけど」

星空を見上げたまま、中谷が言う。

私は、すっかり大人になった横顔を盗み見る。

その頬にそっと口づけると、中谷は急に挙動不審になった。

何だか可愛くて、つい笑ってしまう。

「ちょっかい出してばかりで、嫌な思いさせたよな…本当にごめん。一生かけて償いたい」

そう言って、少年のように、酷く緊張しながら私の手を握る。

大切なことほど、簡単に言葉にはできない。

だから、何も言わず、その手を強く握り返す。

大好きなこの庭園で、私たちは手を繋いだまま、ずっと星空を見上げていた。



FINE