わざわざ聞かなくても、何をしているのかは一目瞭然なのに、そんな間抜けな言葉がこぼれた。

彼は私を見ると、顔面蒼白になり、

「ル…路得(るつ)!?いや…これはその…」

みっともなく言い訳しようとし、女は素っ裸で別の部屋へ逃げて行った。

「どういうつもり?」

私は、怯える彼にツカツカと近付く。

「違うんだ…!これが初めてだし、俺の本命は路得だよ!もう二度と…」

「1回も100回も同じことなんだよッ!」

完全に頭に血が上った私は、生まれて初めてグーで人を殴った。

*****

「全く…信じられないわね」

あとからジンジンと痛み出した私の右手の手当てをしながら、母が呆れて言う。

「ホント!信じられないでしょ!?」

「そうじゃなくて、路得のことを言ってるの」

「何で私!?不貞行為をやらかしたのはあっちなのに!」

母は、あんな浮気男の味方をするとでもいうのか。