「それならお安い御用だよ。夜にお客さんが来ることはないし、昼間も、予約がない時ならいつでも」

その夜を境に、私たちは二人で会うようになった。

色んなところに出掛けたけれど、私はこの庭での真夜中のピクニックが一番好きだ。

「星付きレストランより、ここでピクニックするのがいいなんて、安上がりな女だよなぁ」

中谷はそう言って笑った。

「安上がりで結構です。だけど、安い女には絶対ならないから」

私が言い返すと、

「そうだな。安上がりなのに、ダイヤよりも輝いてる」

子供の頃の私が、今の光景を見たらどう思うだろう。

プライベートだけでなく、この庭園でパーティーが行われる時など、私にピアノ演奏の仕事をくれたりもした。

「中谷くん、素敵な男性に成長したわよねぇ」

母も中谷のことはよく覚えており、夕飯の最中にいきなりそんなことを言われ、むせ返ってしまった私。