今、さりげなく、なかなか衝撃的なことを言われた気がするのだが。

「ホラー作家?」

「それが昔からの夢だったんだけど、最近は、祖父の作ったこの庭園を守りたい気持ちのほうが強くなって。実務経験を積みながら、少しずつ資格も取得してる。大学の専攻が造園系じゃなかったから、上級の資格取得には、まだ実務経験が足りないんだよ」

「そうなんだ…」

ホラー作家と造園業という意外な二足の草鞋だけでなく、ウェディングプランナーであるお姉さんが未婚の母ということにも、実は少し驚いていた。

しかし、そのことを突っ込んで聞くほど無粋ではない。

「俺、さっき婚約解消なんてよくある話って言ったじゃん?身内がそういう経験してるから、これでも一応、大変さはわかるつもりなんだ」

「中谷、無理にそういうこと話さなくてもいいよ」

「そうか…?単に“よくある話”なんて言い方したら、却って嫌な気分にさせるかと思って…」