「あのなぁ…悪阻とは言ったけど、結婚してるなんて一言も言ってないぞ?俺は結婚歴もないし、子供も居ない」

「え?じゃあ、女性のほうの中谷さんって…」

「笹川ってさぁ、昔から早とちりなところあるよな。あの人は俺の姉ちゃんだよ!」

そう言われ、思わず黙り込む。

「お姉さん?中谷って、お姉さんが居たの?」

「そうだよ。7つ上だから、同じ学校に居たことはないけど」

とんだ勘違いに、恥ずかしくなる。

「ごめん…勝手に誤解して声を荒げたりして…」

酷いのは私のほうだ。

「いいよ。実を言うと、姉弟だってことは、聞かれない限り言ってないのもあるし」

「そうなの?」

「ここを使いたい人の大半は、結婚式場としてなんだよ。ウェディングプランナーの姉ちゃんが未婚の母で、俺も未婚でホラー作家と造園の二足の草鞋だと、結婚経験の有無とか縁起を気にする人には嫌がられたりするから」