十七年生きていてこれほど悲痛な悲鳴を上げたのは初めてだ。

 あまりのことに膝を落とし、四つん這いになって串焼きを見下ろす。

 愛しの串焼きは砂に塗れてしまっている。

 いいえ、なんのこれしき、洗えば食べられる!
 たとえ塩が洗い流され、味がなくなっても肉は肉!

 人間、食べなきゃ死ぬんだから!
 他人の視線が何よ、矜持で腹は膨れない!

 恥も外聞もかなぐり捨てて手を伸ばす。
 けれど、私が拾い上げる前に、串焼きは通行人の足によって踏み潰された。

「ああっ!?」
「うわ、なんか踏んだ。汚ねえ」
 若い男性は顔をしかめ、靴の底を何度か地面にこすりつけて去っていった。

「………………あああ……」

 終わった。
 四つん這いになったまま、私は伸ばしかけた手を下ろし、深く深く項垂れた。

 いくら空腹とはいえ、さすがに他人の靴で踏み潰された串焼きを食べようとは思えない。

 私の全財産が……貴重な栄養源が……。

「大丈夫ですか? すみません、ぶつかってしまって……」

 申し訳なさそうに屈んで声をかけてきたのは、左手に茶色い袋を抱えた端正な顔立ちの男性だった。