その言葉が嘘ではない証拠に、彼は口の周りを肉汁で汚しながら豪快に串焼きを平らげていった。

 店先で美味しそうに串焼きを食べる彼の姿はこれ以上ない宣伝になったらしく、俺も、私も、と次々に客が押し寄せる。

 店の周囲で串焼きを頬張る客たちの幸せそうな表情といったら。

「………………」
 もはや辛抱堪らず、私は財布を鞄から取り出し、所持金を確認した。

 ――百デリルならギリギリ足りる!

「私も一本ください!」
 私はほとんど全財産である硬貨を握り締め、差し出した。

「あいよ」
 初老の商人はお金を受け取り、串焼きを私に渡した。
 湯気を立てる串焼きを見下ろして、ごくりと唾を飲み込む。

 次はいつ食事にありつけるかわからない。心して食べよう。

 ――いざ!
 大きく口を開いたその瞬間、斜め後ろから通行人に押された。

 ほとんど突き飛ばされるほどの衝撃を受けて、大きく体勢が崩れ、右手から串が離れた。
 串が地面へ落ちて行く様子が酷くゆっくり見える。

 引き伸ばされた時間感覚が正常に戻ったとき、串焼きは見るも無残な墜落死体と化していた。

「あああああああああ――っ!!」