風に舞う花びら。歓声と口笛。笑顔で手を振る二人。

 本来クロード王子の隣にいるべきは私だったはずなのに。
 たとえ魔法が使えずとも、クロード王子のために立派な淑女になれるよう努力してきたのに――全ては無駄だった。

「まさかこんなことになるなんてねえ。セレスティアも可哀想に……」
 鳴りやまない祝福の拍手の中。

 沿道の脇、高台に設けられた王侯貴族用の観覧席の一つに座っている私の耳に、ひそやかな囁き声が届いた。

 台詞の内容だけを見れば私に同情しているようだけれど、その声音には隠しきれない嘲りがある。

 自分に不利益をもたらさない他人の不幸とは実に甘露なものなのだ。

「仕方ないわよ。イノーラは《国守りの魔女》で、セレスティアは無能だもの。代々優秀な魔女を輩出してきたブランシュ家の恥よ。魔法が使えない魔女なんて何の価値もないわ」

 私はちらりと隣に座る両親を見た。
 私に聞こえているのだから、当然両親にも聞こえているはずなのに、両親が諫める気配はない。

 両親が熱心に見ているのは大勢の騎士に守られ、ゆっくりと大通りを進む馬車の上で手を振るイノーラの姿、ただそれだけ。