「…………私は勘違いで余計なことをしてしまったのね」

 あのときリュオンが必要としていたのは治療ではなく栄養たっぷりの食事だったのか。

 怪我人や病人ではなく、お腹を空かせている子どもを連れ込まれて、診療所の医師もさぞかし困惑したことだろう。

「いや、助かったよ。セラがあのときおれを診療所に連れて行ってくれたから、エンドリーネ伯爵に仕える縁ができたんだ」

「そうなの?」
 温かいオムレツを食べながら、私は銀色の目をぱちくりさせた。

「ああ。診療所にいた医師は偶然にもエンドリーネ伯爵の友人でな。おれの目を見て魔女だと知り、伯爵に紹介してくれたんだ。おれは伯爵の支援を受けて魔法学園に通わせてもらった。貧しい孤児だったおれがいまこうして裕福な生活を送れているのはセラのおかげだ。ありがとう。感謝してる」

「そんな、私は大したことはしてないわよ」
 慌てて手を振ると、リュオンは笑んだ。

「そう言い切れるのがセラの魅力だな。道端で死にかけてた他国の貧民を気にかけて、背負って診療所に連れて行くお人好しなんてそうはいない。イノーラの反応のほうが普通だよ」