襤褸切れのような服を纏った男の子はお世辞にも清潔とは言い難く、妹は顔をしかめて鼻をつまんだ。

 私だけが近づいて身体を改めてみると、彼は転びでもしたのか、右腕に擦過傷を負っていた。

 彼はぐったりしていてなされるがまま。
 服で見えない箇所にはもっと酷い怪我をしているかもしれない。

 私は妹に魔法で治すように頼んだけれど、妹は嫌だと言った。

 怪我を治してやったところで私に何の利益があるの。
 どう見ても礼に足るお金や上等な品物を持っているとは思えない。魔力の無駄。

 こんなのよくある話でしょう。
 見なかったことにして、放っておけばいい。

 みすぼらしい他国の貧民が死んだって私には何の関係もないわ。

 妹が冷たくそう言って立ち去ろうとしたから、私は彼女の前に跪いて懇願した。

 蝶のブローチをくれるなら治してあげてもいい。妹が言った。

 そのとき私が胸元につけていた蝶のブローチは誕生日に両親から貰った宝物だったけれど、私は了承した。

 妹は渋々ながら男の子に手をかざして治癒魔法を使った。