「――、もしかして、貴女は」
「大丈夫じゃないですっ!!」
 彼が何か言いかけるよりも早く私は立ち上がって喚いた。

「これのどこが大丈夫に見えるんですかっ!? どうしてくれるんですか、私の串焼きが、百デリルがっ!!」

 滂沱の涙を流しながら青年の腕を掴み、泥まみれの串焼きを指す。

「え? ええ、ですから申し訳ないと」
 困惑を示すように、瞬きの回数を増やす青年。

「申し訳ないの一言で済まされて堪るものですかっ!」
 通行人たちが好奇の目でこちらを見る中、私は涙目でまくしたてた。

「全財産をはたいたんですよ! 犠牲になった豚に感謝しつつ英気と活力を養って、どん底状態でもめげずに家と職探し頑張ろうって思ってたのに! あなたのせいで全部台無しです! もう最悪ですっ!!」

「家と職探し? 家も仕事もないんですか?」
 青年は金糸の髪をさらりと揺らして首を傾げた。
 ただそれだけの動作が絵になる人だ。