花水公園のベンチを見ると月明かりに照らされたさなを見つけた



「さな」




ゆっくりとさなが涙でぐしゃぐしゃになった顔を上げる




「いおり……私失敗しちゃった。ね」




隣に座って声をかける




「いいんじゃね、さな。」





「……え?」





「さな、自分の思ってたことおばちゃんに言えてたじゃん。
 だから、おばちゃんには伝わったんじゃない」




「そ、そうかな……そうだといいな」

と言って笑うさな、その顔は冬夜さんの最期の笑顔に似ていた




「…なあ、いつまで我慢してんの、そろそろ俺にも弱さ見せてくれてもいいけど、」



と言うとさなの大きな目に涙が溜まっていき、溢れ出した



「…っ私怖かった。本当は気づいてたの、お母さんが花屋の夢を反対した理由。

私がいなかったらきっとお母さんは今も花屋を続けられたってことも

お母さんが私を必要としてなかったらどうしようって、そう考えると怖くなって……」




「さなはさ、そんなに怖かったのに勇気を出してお母さんに自分の気持ち言えたのはどうして?」






「どうしてもお母さんにもう1回前みたいに笑って欲しくて、私は前みたいに穏やかな暮らしを願ってるよ
ってわかって欲しかった

別に裕福な暮らしが出来なくても、お母さんには花屋をやめて欲しくなかった」





「…その気持ちがあれば大丈夫だよ

もう1回家に帰ってお母さんと話そう?

さなのその強い想いが伝わるはずだよ」




「…え、でも……」






「大丈夫、俺が着いとくから。大丈夫だとは思うけど何かあったら守ったげる」



「ありがとう」