一緒に語り合いたいのに、語り合う人がいない。

それってどんなに悲しいことなんだろう。




今日も私は静かに学校の教室で本を読んでいた。

読んでいる本はもちろん最強男子に溺愛されることがメインの、自分の理想に近いもの。

超絶美少女で性格もすごく良くて、頭も良い、そのうえ天然な女の子をかっこいい男の子たちが取り合う。

何回読んでも素敵だと思ってしまう。

こんな完璧な条件が揃っている子だけがこんな素敵な恋をするんだと今更ながら痛感した。

「あ、秋内おはよう。」

本を読んできゅんきゅんしていたまさにそのとき、同じクラスの田所涼介が声をかけてきた。

「あ、おはよう、田所くん。」

本から視線を田所くんに向けると、田所くんはいつも通りのスマイルで私を見下ろしていた。

「秋内、何の本を読んでるの？」

そう言って私が広げていた本を興味深そうに見つめている田所くんに私は慌てて本を閉じる。

すると田所くんは顔を顰めてため息をついた。

「秋内、お前いつも何の本読んでんの？って聞いたら慌てて閉じるよな。なんかいけない本読んでるんじゃねーの。」

そう言いながらニヤニヤ顔に変化して茶化してくる田所くん。

大好きな恋愛小説をバカにされたみたいで腹が立った。

「田所くん、なんでそんな言い方するの？私が何を読もうと私の勝手でしょ？」

ついつい言い返してしまった自分にしまったと後悔する。

せっかく話しかけてくれたのに、こんな言い方したら嫌われちゃうよね。

どうしよう。

「ごめん。」

でも私が想像していた言葉とはうってかわって田所くんは素直に謝ってくれた。

「でもなんか意外だな。秋内も怒ることってあるんだな。」

田所くんはそう言って爽やかなスマイルを見せて席に帰っていった。