ここは天海学園中学部。国内外名の知れた超一流の名門校であるこの学園には最強で最恐の男子、トップThreeと呼ばれている人たちがいた。






キーンコーンカーンコーン。

1限目の終了のチャイムが鳴ると同時にみんな一斉に廊下へと走り出す。

押し合い蹴り合いをしながら一生懸命廊下へと走っていく生徒たち。

そこには男女関係なく様々な人が混じっている。

何を目的にみんな走っているのかって?それはね…。

「ねえねえ!愛里ー!知ってた?今日、なんとあのThreeが学校に来ているみたいなのよ。」

ふと声をかけられてビクッとする。

声をかけてきたこの子は私の友達である野間聖香ちゃん。

入学した当初からずっと仲良しの大親友!何をするのも一緒で聖香ちゃんといると心が安らぐんだよね。

なんて、呑気に紹介なんてしていられない。

「え?今日Three来てんの?やばっ!見に行かないと…」

なんて口に出しては言っているものの正直そんなの全く興味ない。

Threeなんか見に行くんだったら図書室に行ってお気に入りの本を読みふけっていた方が絶対楽しいんだよね。

でも興味が無くても私はThreeを詳しく知る必要がある。

それは私が誰にも言えない秘密があるからだ。

実は私は恋愛漫画家 あいすというネームで活動している。

しかも今大人気少女漫画 最強男子を困らせたいの漫画を連載している張本人でもある。

しかし、恋愛漫画を描くにはそもそも恋愛が沢山溢れかえっている学校に通う必要があるわけで…。

だから今学校中で大注目されているイケメン暴走族軍団、Threeを徹底的に調査する必要があるというわけだ。

そんな私の説明は一旦置いといてまずThreeを見に行かないと!




そう慌てて教室を出たところで余りの人の多さに仰天した。

「おーい、愛里ー、置いてくなー」

と、そこへさっきまで一緒に話していた聖香ちゃんが追いかけてきた。

すっかりThreeに囚われすぎてて聖香ちゃんがいることを忘れてた…。
そんな自分の行動に呆れつつ、Threeを横目で探してみる。

しかし、どれだけ当たりを見回してもそこには人、人、人の山!Threeどころか聖香ちゃんの姿ももういないような…。

なんて思いながら周りをキョロキョロ見回していると、
「う、うわぁ」
思わず後ずさってしまうほどの光景がそこにはあった。

だってだってそこには人が倒れていたから!慌ててその子に駆け寄ってみる。

可哀想に、余りの人の多さにリタイアしてしまっているのかな?

ぐったりしているその子の体を私はそっと持ち上げようとする。

とりあえず保健室に連れていくつもりだった。

で、でも…、

「お、おもっ!」

思わず叫んでしまった。

人ってこんなに重かったけ?

そう感じさせるほどその子は重かった。

そんな間抜けなことを不意に考えていると、キーンコーンカーンコーン。

2限目が始まるチャイムが鳴ってしまった。

みんなガヤガヤと教室に戻っていっている。

私も早く戻らないと…。

で、でも…。

そっとその子の顔を覗き込んでみる。

すごく顔色が悪かった。

流石に病人を廊下に倒れさせたまま、何も知らなかったように教室に戻るのにも気が引ける。

でも授業に遅れるのもそれはそれで良くないような気もしてくる。

あぁどうしよう…。

頭をぐるぐる回転させているまさにその時だった。

「おい。」

後ろから低くて響く滑らかな声が降ってきた。

背中越しに感じるその声にビクッと体を震わせる。

なんて素敵な声なんだろう…。

一瞬でその声の虜になってしまった自分を奮い立たせ、気を取り直して目の前にいるその子を持ち上げようとする。

「おい!」

同じ人物かと思えないほど今度は鋭く激しい声でその言葉は聞こえた。

まさか、私を呼んでいるの?

そう、やっと気づいた私、ハッと後ろを振り向くとそこにはすごく綺麗な男の子が立っていた。



振り向いたその先に立っていたその男の子は私を見るなり少し驚いた顔をしたような気がした。

「おい、お前授業は?」

我に返ったようにその男の子は私に質問を投げかけてきた。だか私は内心少しびっくりしていた。

全身を見るなりその男の子はうちの中学の制服を着ている。でもなんでお前授業は?なんて偉そうに言うことが出来るのだろう。

「あの…、あなたも授業に出なくていいんですか?」

素直に感じたことをそのまま口に出すとその男の子は今度こそびっくりしたような顔になって私の顔をまじまじと眺めた。

「お前、まさか俺の事知らねーのか。」

なんでそんなことを聞くんだろう。

私はあなたとは初めてあったはずなのに?

はっ、まさか私がその男の子の存在を忘れている可能性もあるのか…?

悶々と頭の中から記憶を遡らせているとその男の子はハァとひとつ大きなため息をついた。

ま、まさか私があなたを覚えていないから腹を立ててるとか?

なんてなんの根拠もないことを考えていると
その男の子は「まじかぁ」と呟いた。

意味がわからず頭の中が混乱する。

「私、あなたに出会ったことってありましたっけ?」

素直にそう聞くことにした。

でもその男の子はなんとも納得しないような表情をしている。

だかその後私が抱き抱えているさっき見つけた倒れていた子に目を移すとハッとしたような表情に変わった。

「お前、陸斗と知り合いなのか?」
陸斗…?まさか私が今抱き抱えている子のことかな?

勝手な想像を巡らせ、自分の直感を信じてこう言い放つ。

「この子は通りすがりで倒れていたので、今保健室に連れていこうとしていました。」

そう言うとその男の子は倒れていた子をすぐさま私の手から奪い取りスタスタ歩いてどこかに向かい出していた。

あまりに素早い動作に呆然としつつ、慌ててその男の子について行く。




その時私はまだ知らなかったのだ。その男の子と倒れた子がThreeだということを…。