ジュリアは裏庭に行く前に、朝ハーベスト家から一緒について来てくれたメイドに声を掛けた。


「予定通りお願いね。」


すると、メイドは頷き急いで控室へ行き、ジュリアが用意したブルーのドレスに着替えた。
もちろん送られたドレスではなく、ジュリアが持っていたブルーのドレスだ。


ジュリアはドレスに着替えたメイドと裏庭に向かった。
メイドに向かい小声で囁く。


「朝の打ち合わせ通り裏庭に立っていてね。私はすぐ後ろにいるから、もしもの時はすぐ助けに行くからね。」


ジュリアの言葉に少し不安そうな顔をするメイドだったが、助けに行くと言われ大きく頷いた。


メイドが裏庭に立つと、花壇に隠れていたのだろうか、にやけた一人の若い男性が姿を見せた。
その男性はメイドに向かって歩き出した。

男性はメイドの目の前に立つと、いきなりメイドの手を引き寄せてハグをしたのだった。
そしてわざとらしく大きな声をあげたのだ。


「なぜだ!なぜ俺を裏切ったのだ!あんなに愛していると言ってくれたのに…ジュリア!」


なんて棒読みのようなわざとらしいセリフ。
私はあんな男を見たことが無い。何を言っているのだ。
そう思っていると、さらに裏庭に誰かが近づいて来たのだ。


「アレックス・ブラッドフォード王太子様、ご覧になってください。姉のジュリアは貴方を裏切って、あのような男とここで抱き合っているのですよ。許せないですよね!」


近づいて来たのは、妹のミシェルとアレックス様だ。
おまけに護衛の騎士も一緒について来ている。
ミシェルが何か嘘を言って連れて来たのだろう。


さぁ、そろそろ私の出番ですよね。
私は何事も無かったように登場する。


「まぁ、ミシェル、アレックス様、こんな所へどうなさったのでしょうか?」


するとミシェルは驚きを隠せず目を見開いて大きな声をあげた。


「なぜ!なぜお姉様がここに居るのですか!あの裏庭で抱き合っているのは誰なの?」

そのセリフを言いたいのは私の方だ。
アレックス様は怪訝な顔でミシェルを見た。


「これはどういう事なのかな?ジュリア嬢が一大事だと言うので駆け付けたのだが…ミシェル嬢、説明してくれないか。」