大広間の中に私達が入ると、その後ろから王様と王妃様も大広間に入って来た。
皆の歓声と拍手が一段と大きくなる。

王様と王妃様が大広間の少し高くなっている、舞台のような所に用意された豪華な椅子に座ると、アレックス王太子は私を連れて皆の前に立ったのだ。
皆を静かに見回し、一度私を見て微笑むとゆっくり声を出した。
その声はテノールの良く響く声だ。


「本日は皆に集まってもらい感謝する。私はこちらのジュリア・ハーベスト譲と婚約することを皆に報告する。今日は皆もパーティーを楽しんで私達を祝福して欲しい。」


アレックス様の言葉に皆からお祝いの言葉と盛大な拍手で大広間は割れんばかりの歓声と盛り上がりを見せたのだった。


「わ―、これはおめでたい。」

「おめでとうございます!」

「末永くお幸せに!」


しかし、喜ぶ人達の間に、ちらほらと女性が恐い顔をして、鋭い視線が私を刺しているのを感じる。
確かにアレックス様は王太子というだけではなく、これだけ眉目秀麗な男性だ。
憧れているご令嬢も多いはずで、恨まれても仕方のない事なのだろう。

パーティー参加者の挨拶なども一段落すると、これからは参加者の歓談の時間となる。
アレックス様は話をしたい男性達に囲まれたため、その隙に私は目立たないよう柱の陰に置いてある椅子に座り、大きく息を吐いた。

ちょっと休憩と行きたいところだが、そうもゆっくりしていられないのだ。

予定ではそろそろ次の嫌がらせのイベントが始まる頃だ。

すると、予想通り妹のミシェルが動き出し、私を探して近づいて来た。


「ジュリアお姉様、おめでとうございます。実は今、お城の裏庭にお姉様のご学友がお越しですの。ぜひお姉様にご挨拶をしたいと仰っているので、行って差し上げてはいかがでしょうか。」


まさに予定通りの展開だ。
私が裏庭に行くと見知らぬ男性が待っているはず。
そこへミシェルがアレックス様を連れてやってくるのだろう。

この嫌がらせの回避策はすでにできている。
しかし、騙された振りをしておこう。

「まぁ、それは嬉しいわぁ。すぐに裏庭に参りますわ。」