「そのドレスも貴女にとてもお似合いだ。着てくれて嬉しいよ。僕は君の髪と瞳が美しい黒と聞いていたので、黒のタクシードにしてみたんだけど、どうかな。」


小説ではこの場面で、なぜ送ったドレスを着ていないのか王太子に問い詰められるのだ。
何も言えないジュリアに大きく溜息をつくところだったが、何とか回避できたようだ。

まずは1つ目の嫌がらせをクリアしたと言ったところだろう。
しかし、まだまだ安心はできない。
ここからが難しい嫌がらせ回避になるのだ。


アレックス様は私を自分の腕に掴まらせて静かに歩き出した。
そして、大広間の入り口に立つ。


すると皆の大きな歓声と拍手が巻き起こった。


私は緊張で足がすくみそうだったが、アレックス様は私の耳元で小さく囁いてくれた。


「…大丈夫だよ、僕が付いているから緊張しないで。」