ここはお城の中の大広間。
まるで中世ヨーロッパのバロック様式で造れたお城を思わせる、豪華な装飾がとても美しい。

そこには、ワイルドウッド王国の貴族たちが招待され、男性は皆モーニングやタキシードのような装いに、女性たちは色とりどりのドレスでパーティーに華を添えている。

ジュリアは大広間の隣にある控室で待たされていた。

王家からプレゼントされた、ブルーのドレスはどうやら王太子の瞳の色に合わせて作られているらしい。
ブルーの光沢のある生地に、サファイヤのようなブルーの宝石が首元に散りばめられている。
ドレスのスカートには白のレースが螺旋状に縫い込まれて美しくそして可愛いつくりになっていた。
さすが王家御用達の仕立て屋だ。

私はこういった社交パーティーは苦手だったため、実は王太子の顔をジュリアはもともと知らないのだ。
物語の中でも眉目秀麗な王太子を見てジュリアは頬を熱くしてうっとりと見惚れてしまうのだ。

噂ではこの世のものと思えないほど美しいお顔と聞いているが、所詮人の噂だと思い半分くらいの期待にしておこうと思っている。

私は髪のアレンジもメイクも普段はほとんどしないが、メイド達はここぞとばかり力を入れたようで、自分でも驚くような変身ぶりだった。
鏡に写っているのは見ず知らずの女性のように見えるほどだ。


「黒髪や黒い瞳にブルーのドレスがとても映えて綺麗ですよ。お嬢様!」


メイド達も自分たちの仕上がりに満足しているようである。


少しして、部屋のドアがノックされた。

メイドがドアを開けると、男性が立っていた。
そこに居たのは、ジュリアを迎えに来たのは王太子だったのだ。

王太子は光沢のある黒のタキシードを着ていた。とても長身なのが分かる。
そしてこちらへ近づいて来たため、私は顔を上げたその瞬間に息を吸うのを忘れるくらいの衝撃だった。

まさに皆の噂通り、美しいその姿に言葉が出ない。
長身で程よく筋肉がついているせいか、タキシードも綺麗に着こなしているではないか。

メイド達の言っていた通り、私のドレスと同じサファイヤブルーの瞳が印象的だ。
二重の涼しげな目元だが、意思の強さも感じる美しい瞳だ。
髪は柔らかいゴールドでふわりとカールした髪が額にかかり、セクシーに見える。
高い鼻筋に、薄めで形の良い唇。

本当にこの世の者と思えない美しい男性だったのだ。
想像以上に素敵な王子様だ。


私は挨拶するのも忘れそのまま固まってしまっていた。
あんぐりと口が開いていたのかも知れないが、王太子様はフッと小さく笑ったのだ。


「どうされましたか、ジュリア嬢。緊張されていますか。」


「…申し訳ございません。ブラッドフォード王太子様。」


ジュリアは慌ててドレスの左右を持ち、膝を曲げて挨拶をした。


「そんなに畏まらなくても大丈夫ですよ。私のことはアレックスとお呼びください。」


王太子はふわっと微笑みながら、右手を左胸に当てお辞儀をした。


その姿もカッコ良過ぎる。