確か婚約発表のパーティーでは3つの嫌がらせがあったはずだ。

1つ目は王家から送られたドレスをボロボロにされて着ていくことが出来なくなること。
2つ目は婚約パーティーの最中に見知らぬ男性から自分と恋仲だったと嘘をつかれること。
3つ目は王太子に憧れる女性にジュリアが暴力を振るったことにされてしまうことだ。

ドレスについては回避できたが、後の2つはどうしたものかと大きく息を吐きながら考えるのだった。


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今日はとうとう婚約発表のパーティー当日だ。

朝起きると、さっそく私を担当するメイドが大きな声をあげていた。

「お…お嬢様!大変です!ドレスが!!お城へ着ていくと昨日用意しておいたドレスがボロボロに切り刻まれています!」

やはり物語の通りで想定内だ。
昨日のうちにパーティー会場まで着ていくドレスを一着出して用意してあったのだ。
あまり着ることの無いダミーのドレスだ。
しかし、ここはわざとらしく驚いて見せる。


「まぁ…なんという事でしょうか…パーティーに着ていくドレスが大変!!」


すると、さらに白々しい顔をした妹のミシェルが駆け付けて来た。


「お姉様、大変!王室から送られたドレスですよね。誰かに切り刻まれたそうですわ!」


恐らくミシェルは絶望する私の顔が見たかったのだろう。
しかし、その思惑通りにはさせない。


「でもよかったわぁ。送られたドレスはお城で着替えるようにしてもらったの。お城まで着て行くドレスを選びなおさなくてはならないわね。」


私の話を聞いて、ミシェルはいきなり表情を一変させた。
驚きの表情から見る見る怒りの表情へと変わるのがわかる。


「なんですって…お城で着替えるなんて、なぜそんな事をするの。」


もちろん、あなた方にドレスをボロボロにされないようにです。と言いたいがそういうわけにはいかない。


「えぇ、馬車で皺になってはもったいないので、仕立て屋さんに頼んでおいたの。」


ミシェルはそれ以上何も言わずにプリプリと怒った素振りで部屋を出て行った。
その後ろ姿を見送りながら、ホッとすると言うよりも、してやったりと小さく拳をにぎり口角を上げる自分がいたのだ。


パーティー会場までは王室からお迎えの馬車が来るため、私は家族より一足先にお城へと向かう事になる。
私の支度を担当してくれるメイドが2人同じ馬車に乗ることになった。

これから先の事件を回避するには仲間が必要になる。
この2人には協力してもらう事にする。