義母は私を嫌っていた。

王室から王太子の婚約者候補を、ハーベスト家からどうかと打診された時も、妹のミシェルにして欲しいとお父様にお願いしていたのだ。
しかし、長女の私がいるのにそういう訳にはいかないだろうと、お父様は私を王太子の婚約者候補へ推薦したのだ。

ハーベスト家はワイルドウッド王国のなかでも筆頭となる侯爵家だ。
当然、王太子の婚約者はハーベスト家の娘となったのだ。

義母と妹は王太子の婚約者となる私がゆるせなかったのだろう。
家の玄関で妹のメイドが毒を私に浴びせた事件も、裏で糸を引いていたのは義母だったと思われる。


小説ではこの後、私が回復すると王太子の婚約者を発表するパーティーが行われる。
そこで私は妹と義母から身に覚えのない濡れ衣を着せられるはずだ。

これは断固として未然に手を打ち回避しなくてはならない。


*****


この世界で目を覚まして3日後。

やはり小説の内容通り、王室から婚約発表のパーティーを開催すると連絡が来たようだ。


久しぶりに顔を合わせる義母が口を開いた。
まるで汚いものを見るような目でジュリアを見ている。

「ジュリア、あなたはこのハーベスト家に恥をかかせないようにしてちょうだいね。」

「…はい。お義母様。わかっております。」


たしか、このパーティーに行く当日に私のドレスがボロボロにされるのよね。
先回りしておかなくちゃね。


この世界では婚約発表で着る女性のドレスは、男性の家からプレゼントされるのだ。
だとしたら、ドレスは王家から届くはず…。

先回りしなくちゃね。