アレックス様の声が急に厳しい声に変わった。
恐らくお怒りの表情なのだろう。


「聞いていれば、よくも白々しく話ができますね。私が何も知らないと思っているのですね。」


それでも義母はしらを切り通している。


「何も知らないとは…何を仰っているのか分かりませんわ。」


アレックス様は義母達に向かって声を荒げた。


「そこまでしらを切るなら、教えてやろう。…ベネット、入って来てくれないか。」


アレックス様はハーベスト家に潜入させていたメイドの名を呼んだ。

名前を呼ばれたベネットが、ドアから入って来た。


恐らく義母やミシェルは驚きで声が出ないのだろう、部屋に少しの沈黙があった。

そして話し始めたのはベネットだ。


「ハーベスト侯爵様、並びに奥様お嬢様、お世話になっておりましたベネットでございます。」


「な…なんで…あなたが…ここにいるのよ。」


義母の少し震えたような声が聞こえた。

ベネットが続けて話を始める。

「私は王太子様より命じられて、ハーベスト家にメイドとしてお世話になっておりました。皆さまを騙していた事には深くお詫びを申し上げます。」

すると義母とミシェルが同時に声をあげた。

「まさか、私達を騙していたの!」
「何を言っているのよ、あんたが勝手に私とお母様を陥れようとしているのね。」


アレックス様は義母達の話を大きな声で制した。


「みぐるしいぞ!ハーベスト夫人、そしてミシェル。お前たちの企みは全てベネットから報告を受けていたんだ。」


(…ベネットがスパイのような役割だったなんて、私も驚いたわ…お父様は驚き過ぎて声も出ないようね…)